「先生、それは愛だと思います。」完


「ざ、残念だったね心美ちゃん……」
「家で待ってようかな」
「え、家……!?」
「ついて来てよ。誠君の顔が好きなら、私の顔も好きでしょ?」

顔が好きなら従いなさいよ、なんて言い方、とんでもなく高飛車な王妃とかでない限り言えないよ……。
ここまでわがままが過ぎると、むしろ清々しい。
私は彼女に手を引かれるがまま、先生の自宅を目指した。


時刻は十八時過ぎで、そろそろ先生も仕事を片付け始めている時間だ。
先生の住んでいるマンションは、何の変哲もないふつうの細長いマンションで、学校の隣の隣駅から徒歩十五分ほどのところにあった。
心美ちゃんは合鍵でエントランスを通過し、先生の部屋がある六階までエレベーターで上がった。
自分でもこの展開に全くついていけていない。
何がどうして私は今、彼女の御守を担い、そして高橋先生の家へとやって来てしまったのだろうか……。

先生の部屋の前までいくと、心美ちゃんは鍵で開けることはせずに、ドアの前に寄り掛かった。
「中に入るとめちゃくちゃ怒られるから、私がいけるのはここまでなの」
そう言う心美ちゃんの顔は、少し寂し気だった。
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