「先生、それは愛だと思います。」完
先生はいつも、私が怯むと挑発的な言葉を返してくる。
私はそれにまんまと乗せられてしまうバカだ。
先生の部屋は、全体的に落ち着いたアースカラーで統一されていた。
フローリングの床は白く、茶色のラグは無地で地味だけど、モスグリーンのソファーと相性がいい。
先生はスーツの上着を脱いで、ネクタイを緩める。
先生の部屋に二人きり、という信じられない状況(ファンに知られたら血祭りだ)に、私は硬直してしまった。
化石のように動かない私を見て、先生は、座りなよ、と言って笑う。
「し、失礼します」
ノーネクタイになった先生はなんだかセクシーで、余計緊張してしまう。
先生は、あー疲れた、なんて言いながら、キッチンへ向かい、ボトルコーヒーをコップに注いで出してくれた。
テレビをつけて、と言われたので、テレビのスイッチを入れると、先生がどかっと隣に座った。
「なに、緊張してんの?」
「す、するに決まってるじゃないですかっ」
なんだか余裕な先生に腹が立って、声が裏返ってしまった。
今すぐにリュックから編み物セットを取り出して編み物をして精神を落ち着けたい……。
そんな風に思っていると、先生は、組んだ膝の上で頬杖をつき、ははっと笑った。