「先生、それは愛だと思います。」完
「……じゃあ、やめます」
「……分かった、家まで送るよ」
その言葉に、私は顔を上げて、隣にいる先生の瞳を見つめた。
あっさり私の言葉を飲み込んだ先生に、私は怒りに近い感情を抱く。
なんでこの人は、最初から全てを諦めたような瞳をするんだろう。
「先生が、ちゃんと誰かを愛せるようになったら、やめます。この関係を」
私の言葉に、先生は一度大きく瞳を揺らした。
私は先生の肩に手をかけ、ゆっくりと距離を縮める。
……私の行動は、間違ってるかな。
分からないや。でも、なんだかこの人をほっとけない。
「……文ちゃん、本気で言ってるの?」
先生が、私の行動を一度やんわりと止めるように、私の髪を耳にかけて問いかけた。
私は、そんな先生の手を払って、触れるだけのキスをした。
「あー、まじか……」
先生は、少し動揺したようにそう呟いて、目を逸らす。
「まいったわ……」
困惑している顔を見られたくなかったのか、先生は私を胸に収めて、ポンポンと頭を撫でた。
先生の鼓動が少しだけ速くなっているのを感じながら、私は、この関係性のベクトルがどこへ向かっているのか、考えあぐねていた。