「先生、それは愛だと思います。」完
バスから荷物を全て出し終え、私達は、一度各自部屋に移動した。
部屋には二段ベットが四つ置いてあるだけのシンプルなものだった。部屋全体は檜の香りと埃っぽい空気が混ざっていて、なんだか体調が悪くなりそうな濁り方をしている。
耐え切れず窓を開けると、ちょうど青葉学園のバスが寮に到着したところだった。
「ユイコ、バス来たよ」
「え、本当に!? きゃー、本当に高橋先生いるやばいかっこいい最高!」
同じ部屋であるユイコに声をかけると、ユイコは私を跳ね除けて窓から先生を見つめた。
同室の他の友人も、ユイコと同じように興奮気味に高橋先生を見ている。
「はあかっこいい……うちのクラスの男子なんて、市場に出せないじゃがいもに見えるわ……」
「いやせめて市場には出してあげようよ……」
「ただの白シャツにリュック姿なのに、なんであんなに輝いてるの!? 海のせい!?」
「悩ましい……罪だわ」
皆は感嘆の溜息を漏らし、先生を褒め称えている。
まさか私がそんな神々しい存在である高橋先生にキスをしてしまったなんてバレた日には、一体どうなるのだろう。
考えただけで背筋がゾッとする。
私は、脅えながらひっそりと実行委員会の会議へ向かった。
なるべく先生に会わないように、ひっそりと。