「先生、それは愛だと思います。」完
「文ちゃんお疲れ、忙しそうだね実行委員」
「やっと配り終えたよ……」
資料を配り終え部屋に戻った私は、ぺたりとフローリングの床に座り込んだ。
ユイコはお菓子を食べながら、合宿前に終わらせておくべきだった課題をやっている。
なんだか体がだるいので、一度寝て休みたいが、午後の授業が始まるまで、もう十分しかない。
「ユイコ、今日すごく暑いね……」
「暑いけどそこまでか? 文ちゃん熱あるんじゃないの」
「いやいやまさか……」
「風間ちゃんと仕事やった? 押し付けられてない?」
その質問にはさすがに笑顔で返せなかった。
しかしそうこうしている間に午後の授業開始の時間になり、私達は一階の講義室に移動した。
普段は多目的室としてしようしている部屋らしいが、机と椅子はしっかり用意してあったし、数学の先生はなぜかいつも以上に気合が入っていた。
高橋先生は今、何してるのかな……。
窓から差し込む真っ白な日光を浴びながら、私は暑さで朦朧とする意識の中そんなことを考えていた。
先生が熱弁している、センター試験対策の授業が全く頭に入ってこない。そもそも私は数学が好きではないのだ。
こんな授業より、生物の勉強がしたい。
高橋先生が好きだから、という理由で好きになったわけじゃ無いけど、生物の授業は〝生命〟に関わっているのでなんとなく最初から興味があった。
高橋先生の授業はとてもコンパクトで、「暗記物は家でやってこい、皆が嫌いな所だけねちっこく教えてやる」というスタイルだった。
そのおかげで、生物の点数だけはぐんぐん伸びたし、得意不得意が大きく別れる遺伝も大好きになった。