「先生、それは愛だと思います。」完

ユイコの暴走したひと言に、先生は冷静にツッコミを入れていた。
高橋先生は、七分袖の白いリネンシャツに黒のチノパン、サンダルというラフな格好をしていた。
先生に会うのは三週間ぶりだったので、かなりドキッとしてしまった。
スーツ姿の先生も好きだけど、自然体な先生も何だか大学生みたいで可愛くてかっこいい。
そんなことは私だけでなくクラスの女子皆が思っているらしく、瞳の中にハートマークが浮かんでいるようだった。

まるでお忍びで来ていたアイドルと遭遇してしまったかのような雰囲気に呆気にとられていると、先生とバチッと目が合った。
その瞬間、先生にキスをしたことを思い出してしまい、私は直ぐに目を逸らしてしまった。

やばい、なんて感じの悪いことを。

そう思って視線を恐る恐る戻すと、先生はもう私を見ていなかった。


「二人一組になって、ちゃんと帰ってくるんだぞー」
数学の先生はゆるくスタートの挨拶をして、最初の男女一組が林に向かった。

「あ、実行委員は片付けをしてきてほしいから最後な」
「嘘でしょ先生……」
「すまんな文月、数珠やるから許せ」
「控えめに申してもゴミになるのでいらないです」
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