「先生、それは愛だと思います。」完
いいと言っているのに、高橋先生はひょいひょいと女生徒達を交わして、林へと続く砂浜へ向かった。
どうすべきか考えあぐねていると、先生が振り返って、
「一人じゃ怖いから来てよ」
と、言った。
何を言っているんだと思ったけど、片付けの仕事があるので渋々私も砂浜へ向かう。
海は真っ黒で、砂浜は思ったより熱くない。
サンダルの隙間から入ってくるサラサラとした砂の感覚が気持ちいい。
無言のまましばらく歩いていると、先生は私をじっと見つめてから頭を掻いた。
「……さっきは、盛大にシカトしてくれたね」
「うっ、すみません……」
「さっきどころかこの三週間、電話しても出なかった」
「そそれはだって気まずいというか」
編み物セットが今ここにあったのなら、マフラーを一本編み終えているレベルで私は動揺していた。
……でも、三週間ぶりに先生と話せて嬉しい自分がいる。
ちらっと先生の顔を見ると、先生はつんとした表情をしていた。
気まずい雰囲気のまま浜辺を歩き、林に辿り着いた。
草がさわさわと生足を摩って、とてもくすぐったいし、そこら中に虫が飛んでいてとても不快だ。
一応道はできているものの、土は所々盛り上がってるし、ヒールのあるサンダルでは歩き辛い。
よろよろと歩いていると、捕まりなよ、と言って、先生が腕を差し出す。
一瞬戸惑ったが、有り難くその腕に掴まらせてもらった。
先生の腕は見た目よりずっとしっかりしていて、男の人の腕だった。