「先生、それは愛だと思います。」完
ふっと体から力が抜けて、先生の方に倒れ込んでしまった。
先生は私の背中と足に手を回して、すっと立ち上がった。
私の記憶がはっきりとあったのは、そこまでだった。
「……はい、分かりました。じゃあその間暫く僕が見ておきます」
目を開けると、真っ白な天井が視界いっぱいに広がった。
カーテンの奥から聞こえてくる微かな声は、高橋先生の声だと分かった。
付き添いで来た保健の先生の声が代わりに聞こえなくなり、ドアがパタンとしまる音がした。
すらっとした影がだんだんこちらに近づいてきて、ゆっくりカーテンを開けた。
「あ、起きたんだ」
「高橋先生……私倒れたんですか」
「倒れましたね。パタンと」
先生は丸椅子を私のベッドの横に置き、ベッドの上で頬杖をついた。
ぼうっとした瞳のまま先生を見つめていると、先生はなぜか笑った。
「まだ完全に寝ぼけてますって顔だな。俺のこと誰だかちゃんと分かってる?」
「分かってますよ。私の大好きな高橋先生です……」
「……まだ寝ぼけてますね、完全に」
そう言って先生は私の頬を撫でた。
先生の手はやっぱり冷たくて気持ちがいい。
本能的に頬ずりをすると、先生は少し目を丸くしていたが、すぐに笑って今度は頭を撫でた。