「先生、それは愛だと思います。」完
初めて文ちゃんを見た時から、なんだか不思議と繋がるものを感じたのだ。
また手が止まってしまったことに気付いて、俺はハッとした。
文ちゃんとは、合宿以来顔を合わせていないどころか、連絡も取っていない。
せめて体調がちゃんとよくなったのかどうかだけ、連絡寄越せよ、と思いながら、俺はパソコンとにらみ合った。
* * *
家の電波時計の日付が七月二日になっていることに気付いて、俺は思わず固まった。
毎日毎日ひたすら事務と教案作成と会議を繰り返し、驚くほど速く月日が経っていた。
文ちゃんがいた高校から去って、もう四カ月が経とうとしているのか。
俺は、ソファーに座りコーヒーを飲みながら、しみじみ卓上カレンダーを捲った。
このままものすごいスピードで三十路に突入して、気づいたらじいさんになってそうだな。
月日の流れのスピードを恐れていると、ペットである文鳥の大福がうるさく鳴きだした。
「なんだよ、餌はもうやっただろ」
重い腰を上げてソファーから立ち上がり、大福の元へ向かう。
大福は白い羽をパタパタと羽ばたかせ、籠から出たいというアピールをしている。
籠から大福を出して、手の甲に乗せると、大福はちょんちょんと跳ねるように肩まで登ってきた。