「先生、それは愛だと思います。」完
「かわいいなー、お前」
……そういえば、昔付き合っていた彼女は鳥が嫌いだった。
羽の音が怖いとか、鳴く声がうるさいとか、そんな理由だった気がする。
文ちゃんはどうだろうか。この前来た時は緊張していたせいか大福に気付くことなく帰ってしまったけれど。
文ちゃんと大福はどことなく似ている。
白くて丸くて自由奔放なところとか、近づくのも遠のくのも、気分次第なところとか。
そう思ってることを本人に言ったら、彼女はどんな反応を見せるだろうか。
大福と遊んでいると、ポケットの中でスマホが震えた。
なぜか文ちゃんかな、と思って表示を見たけれど、それはいつしかの鳥嫌いの彼女だった。
「はい、高橋です」
「誠、今何してるの?」
因みに言うと、俺は自分の用件を先に言わずにこっちの予定を聞いてくる奴が嫌いだ。
内容によっては嘘をついてでも断りたい時だってあるからだ。
俺は、酔っぱらった彼女を心底面倒くさいと思いながら、低い声で問いかけた。
「なに? 飲み会なら行かないよ。俺もうシャワー浴びたし」
「あ、家にいるんだね、オッケー」
どうやら墓穴を掘ったらしい。
大学時代付き合っていた彼女は、ひたすら俺の顔がタイプだったらしく、別れてからもこうしてちょくちょく連絡を取ってくる。
家に来るようなことをほのめかす発言をしたので、俺はかなり本気で止めた。
「……お前さ、別れた男の家に来るなよ」
「大丈夫、今彼氏いないし」
「そういう問題じゃなくて」