「先生、それは愛だと思います。」完
苛立った声を出した途端、家のインターホンが鳴った。
信じられないことに、カメラには酔っぱらった様子の彼女が写っていた。
ドアを開けて直接追い出そうとしたが、彼女はそう簡単に追い払える人ではないことを忘れていた。
「イズミ、頼むから帰ってくれ」
「だってもう終電ないんだもーん、お邪魔しまーす」
「イズミっ、迷惑だって言ってるんだよ」
無理矢理靴を脱いだ彼女に強い口調で言うと、彼女はピタッと止まって、大きな瞳をこっちに向けた。
真っ赤な口紅を塗った唇が、ゆっくりと開く。
「……なに、彼女でもできたの?」
「できていてもいなくても、イズミは俺の家に勝手に入る資格はない」
「結局誰と付き合っても最後は必ず別れるのに、付き合うのね」
彼女は冷笑しながら薄いカーディガンを脱ぎ、途中で大福を見つけて嫌な顔をした。
本当に警察に電話して追い返したいとすら思っていると、ポケットの中でスマホが震えた。……文ちゃんからのメッセージだった。
『バイト先が先生の家の近くだったことを、今更知りました。もし近くで私を見かけても、ストーカーではないのでよろしくお願いしますね』。
そうだったのか。だとしたらますますこの状況を見られたらまずい。何もやましいことはしていないけれど、この状況を見られて何もいいことは無い。
厄介な誤解が生まれる前に、無理矢理にでもイズミを返せなくてはいけない。