「先生、それは愛だと思います。」完
「告白しておきながら返事も待たずに勝手に強制終了させようとして、いざOKしたら怯んで、挙句の果てに僕はいつも女生徒をからかっているんなじゃいか、なんて疑いをかける」
「そ、それは……」
「真剣だったんだろうけど、それじゃ伝わらないよ」
なんで、そんな冷たいことを言うの。
高橋先生って、こんな人だったんだ。
私の中の高橋先生のイメージが、ガラガラと音を立てて崩れ去っていくのを感じた。
そうか、私は高橋先生が〝先生〟だから好きだったんだ。
高橋先生を一人の男性として、見れていなかった。
だってもし高橋先生が先生じゃなかったら、私は多分、あんなにもときめいていなかったと思う。
少女漫画で読んだような生徒と教師の恋愛に、幼稚過ぎる憧れを抱いていただけなのかもしれない。
「……文ちゃん、先生のこと嫌いになった?」
「なんでちょっとニヤニヤしてるんですか」
「俺さ、来るもの拒む、去るもの追うタイプなんだよね」
「……からかってるんですか」
「からかってるよ」
そのひと言にカッとなり、先生を睨んだが、先生の顔があまりにもタイプ過ぎてすぐに怒りが鎮火してしまった。その一連の流れがよほど面白かったのか、先生はぶはっと吹き出していた。
「でも俺、文ちゃんのこと気に入ってるのは本当だよ」
「嘘はやめてくださいっ」
怒った口調でそう言うと、先生はすっと立ち上がって、私の腕を掴んで私のことも立たせた。それから、少し残念そうな表情で、「嘘じゃないのに」、と呟いた。