「先生、それは愛だと思います。」完

俺の文ちゃんへの気持ちはどうなのか? と言うと、〝放っておけない子〟というイメージが強い。
放っておけないと思うことが、イコール好きという感情ではないし、でも、文ちゃんには構いたくなる可愛さがある。
父性本能を擽るようなキャラとでもいうのだろうか……そんな曖昧なゾーンに文ちゃんを仕分けていた。

……そう、あのキスシーンを見るまでは。

「あちーな……水飲も」
青葉学園の制服を着た生徒とキスをしている文ちゃんを見た時、正直おもちゃを取り上げられたような気持ちになった。
大人だから冷静に判断できるとか、そもそも文ちゃんに好きな人が出来たら別れる約束だからとか、そんなのは関係ない。面白い訳がない。当たり前だ。

俺は、多少イライラしながらペットボトルのキャップを開け、二リットルサイズのミネラルウォーターをラッパ飲みした。
冷たい水が喉を通り過ぎたが、頭は冴えない。
気持ちの悪い、形の無いモヤモヤとした苛立ちが、ここ数日ずっと胸に痞えている。

……ずっと、クーラーの効いた部屋にいるからだろうか。
一度外に出て気分転換をしようと、俺はあのキス現場の近くのコンビニへと向かった。
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