「先生、それは愛だと思います。」完
* * *
「誠君、部屋いれて」
コンビニから帰ってすぐに、インターホンが鳴った。
ドアの前には、むすっとした表情の心美が、何かを抱えて立っていた。
「誠君宛の郵便物だよ。実家に届いた分、預かってきたの。父さんが捨てる直前だったんだからね」
「ああ、わざわざありがとう」
俺は鍵を解除して、ロビーを通した。
ドアを開けて、久々に心美と顔を合わせると、彼女は俺に抱き着いてきた。
郵便物が玄関に落ちて、乾いた音を立てる。無言で抱き着いたままの心美の背中を、一度だけ撫でた。
「学校、上手くいってないのか?」
そう問いかけると、心美は首を横に振った。なんだ、意外と上手くいっているのか。
「手芸部に入ったの」
手芸部……それってたしか文ちゃんと同じ部活ではないだろうか。
それにしても心美が手芸部なんて、どうせ地味で楽な部活だとでも思ったんだろうな。
そんな風に油断した瞬間、心美は鋭い視線を俺に向けた。
「ねぇ誠君、文月先輩と付き合ってるの?」
思いもよらぬ質問に、俺は一瞬目を見開いた。
「ずっと、いつ聞こうかと思ってたけど……、この前、教室で二人でいるのを見た時、確信したの」
この前……それは、練習試合の話し合いで、東海林高校へ行ったあの時だろうか。
「部活動の帰りに、少し見ただけだったけど、誠君の目、いつもと違った……」
心美は俺から離れて、真っ直ぐな瞳で俺を射抜き、話を続けた。
俺の目? 傍から見ていて、そんなにバレてしまうような表情をしていたのか?
いや、そんな筈がない。俺は、自分の気持ちを顔に出したりはしないし、そもそもそこまで文ちゃんに気持ちは無い。