「先生、それは愛だと思います。」完
ずっと、好きでした。
高橋先生が見知らぬ女生徒と腕を組んでいるのを見てしまったことが、ショックなわけでは無かった。
先生と会う数時間前、私は心美ちゃんに強烈なビンタをされたのだ。
「私から誠君を取らないで!!」
突然向けられた怒りの感情とビンタに、私はかなり茫然としてしまった。
予備校に行く前に、教室で一人勉強をしていたら、部活帰りの心美ちゃんが現れたのだ。
彼女は顔を真っ赤にして、私に縋る様な瞳で、取らないで、と何度も言った。
詳しい事情はわからなかったけれど、心美ちゃんには高橋先生が全てなんだ、ってことはわかった。
そんなことがあった直後に、高橋先生と会ってしまったので、私は動揺して目を合わせることができなかった。
失礼な態度を取ってしまったと分かっているけれど、その時の私の心は、心美ちゃんの泣き顔でいっぱいだったのだ。
* * *
「お前最近ブスさ増してねぇ?」
「なんてこと言うの本当に」
祥太郎君は、頬杖をついて私の顔をしげしげと眺めながらそう言い放った。
「二人とも随分仲良くなってきましたね」
「仙田先生、これが仲良く見えますか」
「いいことだ」
仙田先生はゆったりした声でそう言い、満足げに頷く。
仙田先生、この隣の男はさっき私に堂々と〝ブス〟と言ったんですよ……?
ぎっと祥太郎君を睨みつけると、彼は私の眉間を指で小突いた。
「さっきからずっとここに皴寄ってんだよ、お前」
「うそ、まじか」
「あとさっきから高速で編み物してるけどなんなの? どこまで編むつもりなの?」
「うわいつの間にっ」