「先生、それは愛だと思います。」完
「美里さんは、本当に優しい人で、私がいじめられている時も何回も助けてくれました」
心美ちゃん、いじめられていたんだ……。
色々な情報が頭の中でこんがらがって、処理しきれないレベルに達していた。
「私の家庭は、崩壊しかかってて、いつの間にか笑えなくなって、気づいたら人間関係が上手く築けなくなっていました」
「……そう、だったの……」
「いじめがヒートアップしてきた時に、転校を薦めてくれたのが誠君でした。今までずっと言いだせなかった辛いことを全部誠君がお父さんに話して、転校させてくれたんです」
心美ちゃんと高橋先生の過去を聞いて、やっと二人の関係性を理解することができた。
「誠君は、いじめの理由は自分だと思って、その罪悪感からか、私を遠ざけようとしてる。私は誠君を恨んだことなんか、一度もないのに……」
心美ちゃんの手が震えていることに気付いて、私はかける言葉を失ってしまった。
きっと、私が想像する何倍も辛い経験を彼女はしてきたのだろう。そしてその辛いことから助けてくれた高橋先生が、彼女にとってどれだけかけがえのない存在であるか……その答えは、私が到底理解しきれない遠い場所にあるんだろう。