「先生、それは愛だと思います。」完
その日私は、先生の住んでいるマンションに、久々に向かった。
勿論ちゃんと事前に行くことは伝えた。
ロビーの鍵を解除してもらい、エレベーターで先生のいる階まで向かう。
先生の部屋のインターホンを鳴らすと、すぐに先生が出てきて、入って、と私の肩を軽く押した。
先生の部屋は、相変わらず綺麗で、でもどこか冷たい雰囲気だった。
この前来た時は緊張していて気付けなかったけれど、真っ白で可愛い文鳥が必死に餌を突いていた。
「かわいい……」
思わず呟くと、先生は籠からその文鳥を取り出して、私の掌に乗せた。
「大福って言うんだ。可愛いでしょ」
「ネーミングセンスありますね……」
掌でちょこちょこと動く大福を見つめながらそう言うと、高橋先生は少し笑った。
それから、大福を止まり木に移して、私にソファーに座るように促した。
「話って何?」
先生は私の隣に座って、平然としたいつもの声で、そう問いかけてきた。
私は、一度呼吸を整えてから、静かに口火を切った。
「この関係はやっぱりやめましょう」
口に出したら、なんだか泣きそうになってしまった。
私もう、先生の彼女じゃ無くなるんだ。そうなんだ。急に自分の決断が現実的になって、その先の言葉に詰まった。
先生は少し間をおいてから、
「……分かった。今までありがとう、ごめんね」
と、淡々と告げた。
あまりにあっさりとした返事を聞いて、私は本当にただの気まぐれだったんだ、ということを実感して、じわじわと涙が出てきた。