東の彦
新しい土地に住まう
少年が熱から目覚めた数時間後、五日乃春村(いつかのはるむら)にある
私立五花泉(ごかもと)学園高等部の校門を転校生が潜ろうとしていた。

ここ五日乃春村は、ふくしま県あいづ地方にある小さな村だが、
面積約八十平方キロメートル、人口約二万一千人と隣のばんだい町よりも大きく、人口密度も高い。
県の条件でも町と名乗ることもできるが、あえて村に拘っている すこし独特な村である。
独特な風習は歴史や宗教観にも大いに見られるが、こちらはあえて触れないでおく。
それ以外は日本のどこにでも見られる田園地帯ひろがる風景であった。
特に北隣のゆがわ村は、あいづ盆地のほぼ中心にあり、地面の高低差が少ない村で、
五日乃春村も、地形だけは それによく似ていた。
しかし先ほど省いた話題通り かなり風変わりな村で 
特に五日乃春村を構成する六つに分かれた地区は それぞれがまったく異なった特質を持っていた。
私立五花泉学園はその中でも少し厳かな静けさがある泉地区にあり、泉地区は村一番、土地面積も人口も少ない。
その名のとおり、泉地区には土地面積の半分以上を占めるほどの泉が特徴で その泉のすべてを私立五花泉学園が所有していた。
泉を囲うように広がる竹林や雑木林の南隣に学園は位置し、その学園の周囲を梅、桃、藤、木蓮、桜の木が無数に植えられていて、土地だけは広々としたこの学園は、みどり豊かな印象を受ける。
幼稚園から大学まで一貫性のシステムで村の子供他著の九割以上がこの学園に入学しており、約三千人の生徒が通っていた。
この学園も、この風変わりな村、同様かわった風が吹き巻いていた。
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