麗しき星の花
「わあー、こんなふうになってるんだ。凄いですねー」

 橘家の本邸から少し離れたところにある、木々に囲まれた野外射撃場。その屋根の下にあるテーブルで魔銃『クローリス』を分解してメンテナンスしていたら、玲音が目を輝かせて傍に寄ってきた。

「危ないから、触らないでね?」

「はいっ、わかりました!」

 大きな茶色の瞳を細めて、愛らしい笑みを浮かべる玲音。かわいいから頭を撫でてあげる。

「いつもこうしてメンテナンスするんですか?」

「うん、毎日必ず。ちゃんとしないと、暴発するかもしれないから……」

「そうなんですね。やっぱり手入れは大事なんですね」

「そうだね。玲音のピアノも、そう?」

「はい。調律は定期的にしてもらっていますし、僕もちゃんと拭いてあげていますよ。僕のベーゼンドルファー、綺麗でしょう?」

「うん、綺麗。ちゃんと大切にしていて、えらいね」

「えへへへー」

 また頭を撫でてあげると、玲音は頬を染めて嬉しそうに微笑んだ。

 少しクセのある茶髪の愛らしい男の子は、こっちに来てすぐに懐いてくれて、弟が“もう一人”増えたみたいで楽しい。

 ……一人は“兄”だけど。


 メンテナンスを終えたクローリスを組み立て、右大腿のホルスターに収める。そしてもう一丁の『ヴィオラ』を手に取る。

「リィファさんは二挺拳銃なんですね。かっこいいなぁ。でも……弾の交換? はどうするんですか?」

「通常弾のときは、こっちの、クローリスしか使わないよ。弾の……そう、交換が、出来ないから」

「じゃあ、どういうときに二挺にするんですか?」

「魔力で装填するとき」

 ヴィオラも解体しながら、そう答える。

< 110 / 499 >

この作品をシェア

pagetop