麗しき星の花
自室にいたときは気づかなかったが、今宵の天気は荒れ模様。外は暴風が吹き荒れ、雨が強く窓に叩きつけられていた。
更に雷鳴が響く。春の嵐だ。
鋭い雷光に貫かれる感覚に、リィは身を竦めた。
嵐も、雷も苦手だ。
何故苦手かと言えば、シンと一緒に竜巻に巻き込まれて空に飛ばされたからだ。雷鳴轟く暴風の中で、五体を引きちぎられるかと思った。
それでも、いつも両親が命懸けで助けてくれたから、こうして身を縮める程度で済んでいるのだ。むしろ嵐にトラウマをまったく持たないシンの方がどうかしている。なんなのだろう、兄のあの鉄の心臓は──。リィは断崖絶壁の隙間にじわじわと恐怖を刻みながら足を進めた。
書庫の両開きの扉の前までたどり着くと、リィは少しだけ安堵出来た。廊下は電気のスイッチの位置が分からなくて点けられなかったが、書庫の中はどこにあるか記憶している。
心なしか小動物の耳のように結ってある髪まで、元気なく垂れてしまっているように見えていたが、ここにきてぴょこっと元気を出した。顔を上げたからだ。
恐怖から逃れられる安堵感に顔を綻ばせようとして──扉から手を離した。
「だれ?」
さっと身を引き、気配のする方に視線を向ける。
橘家の人々の気配ではない。リィは琴音たちだけでなく、執事たちやメイドたちの気配まで覚えてしまっていた。
覚えのない気配だ。故に警戒心を顕にする。
更に雷鳴が響く。春の嵐だ。
鋭い雷光に貫かれる感覚に、リィは身を竦めた。
嵐も、雷も苦手だ。
何故苦手かと言えば、シンと一緒に竜巻に巻き込まれて空に飛ばされたからだ。雷鳴轟く暴風の中で、五体を引きちぎられるかと思った。
それでも、いつも両親が命懸けで助けてくれたから、こうして身を縮める程度で済んでいるのだ。むしろ嵐にトラウマをまったく持たないシンの方がどうかしている。なんなのだろう、兄のあの鉄の心臓は──。リィは断崖絶壁の隙間にじわじわと恐怖を刻みながら足を進めた。
書庫の両開きの扉の前までたどり着くと、リィは少しだけ安堵出来た。廊下は電気のスイッチの位置が分からなくて点けられなかったが、書庫の中はどこにあるか記憶している。
心なしか小動物の耳のように結ってある髪まで、元気なく垂れてしまっているように見えていたが、ここにきてぴょこっと元気を出した。顔を上げたからだ。
恐怖から逃れられる安堵感に顔を綻ばせようとして──扉から手を離した。
「だれ?」
さっと身を引き、気配のする方に視線を向ける。
橘家の人々の気配ではない。リィは琴音たちだけでなく、執事たちやメイドたちの気配まで覚えてしまっていた。
覚えのない気配だ。故に警戒心を顕にする。