麗しき星の花
ある晴れた休日のこと。
玲音は朝のピアノのレッスンを終え、庭の散策をしていた。噴水の見える東屋を通り、父の自慢の薔薇園をゆっくりと見て回り、屋敷の青い尖塔を視界の端に入れながら林の中に踏み入った。
この先に綺麗な泉が湧いているのだ。周りは桜の木に囲まれているので、今の時期は一年で一番華やいでいる。
天気が良い日はピクニック気分でここまでやってきて、家族でお弁当を広げたりすることもある、春の庭の絶景スポットだ。
春の柔らかな風に吹かれながら林を抜けると、静かな水の流れと、桜色の景色に出迎えられた。
ざあ、と風に揺れる桜たちに目を細め、溢れる光に手を翳す。そこでリィに出会った。
出会った、という言い方は適切ではないかもしれない。
眠っているリィを見つけた。
リィは木漏れ日がゆらゆら揺れる中で、大きな桜の木の根元に体を預けて眠っていた。はらはらと舞い散る桜の花びらが、時折彼女の身体にそっと寄り添う。
どうしてこんなところで眠っているんだろう。
そう疑問に思っていると、彼女の膝の上に開きっぱなしの分厚い本が乗せられていることに気付いた。傍らにも何冊か、似たような装丁の本が積んである。そしてその隣には、菜野人の武勇伝を認めた漫画が数冊。
毎日書庫に通いつめているリィだが、今日は屋敷の中にいるのはもったいないほどの快晴だ。玲音のように外の景色も楽しみたくなったのだろう。
それにしても。
「お一人でこんなところで……危ないですよー?」
玲音はトコトコとリィに近づく。
ちょこん、としゃがみこんで穏やかな寝顔を見つめる。そのまましばらく待ってみたが起きる気配はなかった。
玲音は朝のピアノのレッスンを終え、庭の散策をしていた。噴水の見える東屋を通り、父の自慢の薔薇園をゆっくりと見て回り、屋敷の青い尖塔を視界の端に入れながら林の中に踏み入った。
この先に綺麗な泉が湧いているのだ。周りは桜の木に囲まれているので、今の時期は一年で一番華やいでいる。
天気が良い日はピクニック気分でここまでやってきて、家族でお弁当を広げたりすることもある、春の庭の絶景スポットだ。
春の柔らかな風に吹かれながら林を抜けると、静かな水の流れと、桜色の景色に出迎えられた。
ざあ、と風に揺れる桜たちに目を細め、溢れる光に手を翳す。そこでリィに出会った。
出会った、という言い方は適切ではないかもしれない。
眠っているリィを見つけた。
リィは木漏れ日がゆらゆら揺れる中で、大きな桜の木の根元に体を預けて眠っていた。はらはらと舞い散る桜の花びらが、時折彼女の身体にそっと寄り添う。
どうしてこんなところで眠っているんだろう。
そう疑問に思っていると、彼女の膝の上に開きっぱなしの分厚い本が乗せられていることに気付いた。傍らにも何冊か、似たような装丁の本が積んである。そしてその隣には、菜野人の武勇伝を認めた漫画が数冊。
毎日書庫に通いつめているリィだが、今日は屋敷の中にいるのはもったいないほどの快晴だ。玲音のように外の景色も楽しみたくなったのだろう。
それにしても。
「お一人でこんなところで……危ないですよー?」
玲音はトコトコとリィに近づく。
ちょこん、としゃがみこんで穏やかな寝顔を見つめる。そのまましばらく待ってみたが起きる気配はなかった。