麗しき星の花
「とおさあああああんっっ!?」

 ばあん、とテーブルに手をついて、光の中の映像に向かって声を上げる。……ちなみに、リィもちゃんと叫んでいるのだが、シンの馬鹿でかい声によりすっかりかき消されている。

『こら、シルヴィ。いくら俺でも人間だから、噛み付かれたら怪我するんだけど』

 巨大ドラゴンの口の中から、父の声がした。その足元にはどくどくと赤黒い血が流れている。

『はひゃっ! そうだった! ニンゲンって柔いんだったな! すっかり忘っちだー。ごめん、ごめんなんしょー』

 ドラゴンが大きく口を開け、フェイレイから離れた。フェイレイの肩とか腹とか太腿とかに大きな穴が空いてる。大丈夫か、これ。

『死なねぇでけろ! 死なねぇでけろ! なじょしたらいいんだべ? 舐めだら治っぺが?』

 巨大碧ドラゴンがオロオロした様子で、目から水の塊──涙らしい──を零しながら、べろーん、と大きな舌でフェイレイの全身を一舐めした。

 すると、ぱちくり、と目を見開いた。

『ほっほう? フェイレイは血もうめぇぞ。なんだべな? 魔力流れでんでねぇのが?』

『ああ、そうかもね。俺、精霊の血入ってるしなー』

 あはは、とフェイレイが笑いながら答える。顔は出血のためにみるみる青くなっているくせに。

「そんな呑気に喋ってないで手当しろよおおお!」

 シンは叫ぶが、これは記録。こちらの声は届かない。

『フェイ、そんな血まみれでいたらシンとリィが心配するから……治すよ?』

 母の声がどこからともなく聞こえてきて、フェイレイの周りを白い癒しの光が包み込んだ。服はボロボロだけれど、血の流れは止まったようでほっとする。

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