麗しき星の花
「ごめんなんしょ……」

 しゅーん、と小さくなって落ち込むシルヴィ。

 リィの圧迫死は免れたが、ベッドはバキバキと折れて壊れてしまっていた。橘家の人々に平謝りだ。

「ベッドはすぐに新しいものを用意いたします。ですが……シルヴィさん、眠っている間にドラゴンに戻ってしまうのは、無意識なのですよね?」

 騒ぎを聞いて駆けつけてきた琴音が、困ったようにシルヴィを見る。

「んだ……寝でる間のごどは、よぐ覚えでねぇ……」

「それでは、お隣のお部屋にシルヴィさん専用の寝床を用意させましょう。このままではリィシンさんもリィファさんも良く眠れないでしょうし……」

「ひ、ひとんじ寝んのが?」

「ひとんじ? ああ、お一人で、ということですね。ええ、そう、なります……」

「あううううん」

 シルヴィの碧色の目から、ぽろぽろと涙が溢れる。琴音としてもこの幼いドラゴン──今は小さな女の子の姿だが──をひとりで寝せるのは非常に忍びないのだが、ここ最近疲れて見えるシンとリィを見ると、そう提案せざるを得なかった。

 シルヴィはチラリと兄と姉を見る。

 自分が魔力をばくばく食べるせいで、確かに疲れて見える。その上睡眠まで邪魔してしまうとなると、更にぐったりさせることになるだろう。

「う、うう……兄ちゃんと姉ちゃんに迷惑はかげらんねぇ。よ、よす。おれ、我慢する。おれ、やれば出来る子だがんなっ!」

 目にたっぷりと涙を溜めながらも、シルヴィはそう宣言した。

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