麗しき星の花
 リィは常に高速歩法を使うことはしない。一瞬の踏み込みにだけ使ってシンの攻撃を避け、あとは流す。緩急つけられた動きにシンは翻弄される。

 しかし、シンの凄いところは、翻弄されながらも常にピタリとついていくところだ。

 運動量はリィの倍はあるだろう。なのに疲れなど微塵も見せない。


「うらあっ!」

 そしてとうとう、リィの足がシンに捕まった。

 こういう遊びの場合、並列思考の持ち主であるリィの方が有利なのだが、長期戦になるとどうしても不利になる。

「よっしゃ、交替な!」

 嬉々として告げるシンに、リィは汗を拭いながら溜息。

「もう少し、体力つけないと、だめかな……」

 シンの体力が化け物染みているだけで、リィは一般の女子からすれば、十分凄まじい体力の持ち主なのだが。

 兄から逃げ回ることは、徐々に困難になってきた。

「さあ、来いっ!」

 パン、と手を叩いてやる気満々のシンに、リィは静かな闘志を燃やす。

「すぐに捕まえてあげる……」

 そうして、長い長い第二ラウンドが開始した。




 その『遊び』を見学していた琴音と玲音は。

「凄い遊びですね。とても私たちにはついていけません……」

「そうだね。僕たちに出来ることは、精々応援のために音を奏でることかなぁ」

 なんて言い合い、琴音はヴァイオリンを、玲音がフルートを広間の隅で奏でていた。

 優雅なリズムに合わせてステップを踏み、くるくる回り、踊る(闘う)双子。大広間が鬼ごっこ会場からダンスフロアへ様変わりだ。シルヴィも執事の南原や東条の手を取って、楽しそうにくるくる回る。

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