麗しき星の花
 6月某日。

 フェイレイとリディルの元に、かわいい子どもたちからの手紙が届いた。それは過酷な旅を続ける彼らの、一番の癒しであった。

「シルヴィの手紙はいつも面白いな」

 ガチャガチャした汚い字だが、一生懸命書いたのが伝わってくるあたたかい手紙だ。それを読み進めていたフェイレイは、ある一文に目を止めた。


『姉ちゃんに、彼氏の霸龍闘ができますた』


 大自然の青い空の下を、ピチチ、と美しい声で鳴く鳥が渡って行く。

 その更に下で。

「のおおおおおおお!!!!!?」

 絶叫が、響いた。

 リディルと、少し離れたところにいたクードがビクリと肩を揺らす。

 手紙を握りしめながらプルプル震えているフェイレイを見て、訝しげな顔をしながらリディルも手紙に目を通す。

「……霸龍闘って、にゃんにゃん先生の息子さん……? わあ……」

 リディル、ちょっと感動。彼女は密かに龍娘先生が大好きだった。彼女の息子さんならいいよ、応援するよ、と心を熱くする。

 しかし父親はそうはいかないようで。

「リディル! にゃんにゃん先生に手紙だ! 霸龍闘に決闘を申し込む許可をもらう!」

「なに言ってるの、フェイ。そんな恥ずかしいこと、やめて」

「リィはまだ12だぞ? 彼氏とかまだ早い!」

「こっちでは別に早くないよ……」

 ミルトゥワの平均結婚年齢は18歳前後だ。魔族襲撃の影響で平均寿命も長くないし、子孫を残すために子どものうちから結婚相手が決まってることも珍しくない。だからリィくらいの年齢で相手が決まっていても、別に不思議でも何でもないのだ。

「それでも駄目ー!」

 お父さん、吠える。

 娘への愛故の叫びだった。


 暴れそうなフェイレイをリディルは必死に説得した。

 妹思いのシンが認めたんだから大丈夫だよ、と。

 とどめに、お前たちは今異世界に行く余裕などないだろう、とクードに冷静に突っ込まれて、火種は誰にも知られることなく、無事に沈静化された。



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