麗しき星の花
「参ったなー。買わないと駄目かな。今月の小遣い、いくら残ってたっけ……」

 上がりきらないファスナーのせいで、ちょっとだらしなくワンピースを着たままシンが唸る。

「それなら、琴音に相談するといいよ。執事の南原さんが、きっと詳しい……」

 リィがそうアドバイスしてやると、シンはパアッと顔を輝かせた。

「うん、それがいいな! じゃあ琴音んとこ行って来る!」

 思い立ったら即行動のシンは、弾む足取りで部屋を出て行った。……上がりきらないファスナーのせいで、ちょっとだらしなくワンピースを着たまま。

 しかしそれを咎める暇も気力もなかったリィは、そのままシンを見送った。

「……」

 呆然としたまま、クローゼットから出してベッドの上に置いたままになっている自分の服を見つめる。

(……姉……)

 姉。

 姉か、と。

 自分の中にその言葉を染み込ませようと連呼してみる。

 お姉ちゃん。

 お姉ちゃん……お姉ちゃんって、どんな感じだろう。

 お姉ちゃんになってもシンはきっと、武闘派なアニメや漫画が好きだろう。修行を怠ることなく、細マッチョな剣士、最終的には勇者を目指すだろう。

 それでも心は乙女。

 一緒に黄金比率のための体操をして(今もやっている)、一緒に料理をして(今もやっている)、一緒に買い物に行って(今もやっている)、一緒にお化粧したり(これはまだやってない)、一緒にお風呂に入って背中流し合いっこして、「ちょっとー、また胸が大きくなったんじゃなーい?」「やだ、あんまり見ないでよ……」「あはは、なに恥ずかしがってんのー。私たち姉妹じゃなーい」……なんて笑い合って……。

「……ありえない……」

 リィは少し青くなりながら、ベッド脇に蹲った。

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