麗しき星の花
 南原と琴音の手で変身した兄は、見事なまでに姉になっていた。

 足の開き方や立ち方は男の子に違いないのだが、薄く化粧もされているのか、見た目だけは完璧に女の子だ。

(お、おばあちゃん、そっくり……)

 シンの姿は、今は亡き父方の祖母、アリアにそっくりだった。

 姿絵でしか見たことのない祖母だけれど、意志の強そうな瞳とか、偉そうな立ち姿とか。「馬鹿者おおー!」と叫びながら父をぶん殴っていたという祖母が、過去から舞い戻ってきたかのようだ。

「双子の特性を生かそうと思って、髪はリィファちゃんとおそろいにしてみたのよ。ほら、リィファちゃんの分のウィッグ」

「さあさあ、リィファさんもお着替えしましょう。双子のメイドさん、きっとかわいらしいですわ!」

 南原と琴音はなぜか大興奮で、リィにもそう勧める。

「えっ、あの、私は別に着なくても……」

「いいからいいから!」

 ぐいぐいと寝室の方へ押し込められ、服を脱がされて着替えさせられ、腰まであるハニーブラウンの長いウィッグを被せられ、更に化粧まで施されてリビングにぽーんと放り出された。

 髪と目の色が違うだけの、似ている双子が向かい合う。

「……へぇー。化粧すると女の子って変わるモンだなぁ。スゲーかわいいよ」

 感心しながらリィを眺めるシンだが、自身の方が変わっていることには気づいているのだろうか。

「な、なんで私まで……」

 久々に腰までの長さになった髪に、落ち着かない様子のリィ。

「今まで似てない、似てないと思ってたけど、こうしてみるとやっぱり兄妹なのねぇ。似てるわぁ」

「ええ、お二人ともとても可愛らしいですよ」

 満足そうな南原と、うっとりと頬を染める琴音。

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