麗しき星の花
 その後ろから、カメラを持った東条がパシャパシャとシャッターを切っている。

「な、なにをしているんですか、東条さん……」

「見た通り、写真を撮っております。お二人の愛らしい写真、ぜひご両親に送って差し上げてください」

「え、い、いいです、父様たちがビックリして、旅に差し支えると大変ですから……」

 息子が娘になったなど、両親が知ったらどう思うか。

 ……まあ、大らかなあの2人のことだから、「そうなんだー」で済む可能性は大いにあるけれども、もしかするとショックを受けて旅に影響が出るかもしれない。そんなことは避けなければ。

「父さんたちがビックリするって? ああ、アリアばあちゃんにソックリだから? まあ俺もビックリしたけどさ」

「ちがう……」

「ん? ああ、父さんにソックリだから? 父さんが女装したときは、ばあちゃんに『お前、気持ち悪いくらいに私にソックリだな』って言われたらしいもんな」

「そ、そんな話もあったけど……そうじゃなくて」

「じゃあなんだよ」

 リィは少しだけ言葉に詰まった。

 けれども両親に余計な心配をかけないために、勇気を振り絞って言葉にした。

「シンが息子じゃなくて娘になったなんて知って、ショックを受けたら大変だよっ……」

 一瞬の沈黙があった。

 東条のカメラのシャッターを切る音だけが、その静寂の中に響いた。

 そして。

「……お前、何言ってんの?」

 怪訝そうな顔をしたシンに、そう、ばっさり切られた。


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