麗しき星の花
「ありがとうございました!」

 夕方、週に二度ほど修行の様子を見に来てくれる拓斗に頭を下げ、双子は頬を伝い落ちる汗を拭った。

 橘拓斗。

 現橘家当主の弟で、龍娘流中国拳法の使い手。『努力の天才』と言われた拓斗は、今も尚、高みを目指している。その姿勢が双子に良い影響と刺激を与え、更なる飛躍へと繋げてくれていた。

「やっぱ教えてくれる人って大事だなー」

 いつも後ろに控えてくれているメイドさんたちにタオルをもらい、わしわしと赤い髪を拭きながらシンが言う。

「気持ちが引き締まるし、新しい技も教えてもらえるし」

「うん……。色んな技への対処法も、ここから学べる……」

 リィも頷きながら、タオルで顔を拭く。

「拓斗さん、毎日来てくれたらいいのにー」

 そう声をかけると、少々くたびれた空手着を着た爽やかスポーツマン系イケメン(ただし童顔)が、タオルで汗を拭きながら苦笑した。

「ごめんね。そうしてあげたいけど、僕も道場を空けるわけにはいかないからね」

 拓斗は橘邸から少し離れた場所に道場を構え、そこの師範として生徒たちに中国拳法を教えている。今日来てもらえたのも、貴重な休み時間の合間を縫ってのことだ。我侭を言ってはいけないと、リィはシンの頭を軽く小突く。

「瑠璃たちも霸龍闘たちも、師匠について修行してるからな。置いてかれないか、ちょっと不安なんだ。黒爪のこともあるしさぁ……」

 正直に不安を口にすると、拓斗も少し考え込む。

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