麗しき星の花
 シンとリィは自分たちで食事は作れるが、勉強や修行で忙しいため、大抵は橘家にお世話になっている。掃除もやっているが定期的にハウスクリーニングが入るので、自分たちですべてやっているのは洗濯くらいだ。

 こちらの世界の文明の利器は驚くものばかりだが、とりわけ全自動洗濯機は双子にとって画期的だった。初めて洗濯機(ドラム型)を目にしたときはひどく感動して、2人してしゃがみ込んで、いつまでもいつまでもぐるぐる回る様子を覗いていたものだった。



「拓斗叔父様、すみません、今日はお父様とお母様もご一緒できるはずだったのですが……」

 豪華な料理が並べられたダイニングのテーブルについたところで、家長代理である琴音が申し訳なさそうに謝った。

「うん、仕方ないよ。嵐で飛行機が飛べないんじゃね」

「でも何か、お父様に相談がおありなのでしょう? 大事な用件だったのでは?」

「そうだったんだけど……また今度で大丈夫だよ」

「でもそれじゃあ、またプロポーズが延びちゃうよね?」

 琴音の隣から、かわいい悪魔がニコニコ笑顔で爆弾を投下した。

「ええっ! 拓斗叔父様、とうとうペイン様に結婚を申し込むのですか!」

 琴音が頬を染めて声を上げる。

「いやっ、そのっ……れ、玲音、どこからその話をっ……!」

 赤いのか青いのか良く分からない顔色で慌てふためく拓斗。彼は相変わらず純情のようだ。

「えーとね、この間、お父様が拓斗くんと電話でお話してるの、ちょっとだけ聞いちゃったんだぁ……。盗み聞きして、ごめんなさい」

 こまり眉で身を竦める玲音は、怒られるのを怖がっているようにも見える。

「あ、ああ、いいんだよ。聞こえてしまったんだから仕方ないよ」

 玲音の様子に拓斗は優しい笑顔を作る。

 しかしシンとリィは見ていた。

 拓斗が琴音へ視線を向けた隙に、怜音が一瞬だけ悪戯っぽい笑みを浮かべたのを。

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