麗しき星の花
(玲音~)

 シンが睨むように視線を送ると、玲音はかわいらしくペロリと舌を出した。

 僕は悪くないんだよ、だって本当にたまたま聞こえちゃっただけだもん。そりゃあ、興味あったし面白そうだからこっそりずーっと聞いてたけどー……とは、風の精霊シルフによる心の声通訳だ。

 とりあえずこの場は「駄目だぞ」と視線を送るだけに留め、拓斗や琴音の様子を伺う。

「まあぁ、そうなのですか! それはお父様だけでなくお爺様たちにもご報告して、一族を上げてお祝いをしないと! 式はいつごろの予定ですの? 結納の日取りは決めてありますの? 喜屋武家と言えば天神の大地主ですもの、方々のご挨拶や準備が大変ですわ、柊や藤にも早めに連絡をして段取っていただかないと!」

「い、いや、琴音、落ち着いて……その……まだそういう段階じゃないから……」

「そうだよ琴音ちゃん。まだプロポーズしてないんだもの。ペインさんのお返事をもらわないことには動きようがないよ?」

「そ、そうですわね、私としたことが焦ってしまいました。だって拓斗叔父様のご結婚はいつになるのかとずっと待っていたのですもの」

「リングピロー持って歩くの、夢だったもんね、琴音ちゃん」

「ええ、そうです。拓斗叔父様と花音叔母様のリングピローは私と玲音で持ちます! もちろん、私の手作りで!」

「お父様にフォローしてもらうから安心してね、拓斗くん」

「教会でも神前でも仏前でも人前でも、どれでもお任せください。それに合わせて作りますから!」

「琴音ちゃん、ここだけは譲れないみたいだから、大目に見てやってね」

 グッと拳を握り、力強く宣言する琴音の隣で、玲音が邪気のない笑顔でそう囁く。

「いや、あのね、2人とも……」

 拓斗が口を挟むのも許さず、琴音は続ける。

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