麗しき星の花
「それで、拓斗叔父様、プロポーズの言葉は考えられました? 何年も待たせているのですから、最高の場所で、最高の言葉を贈ってくださいね。一生に一度のことなのですから、思い出に残るような素敵なものがいいですわ」

「いや、う、うん、分かってる……」

「拓斗さん、なんて言うの?」

 シンも興味深々で口を挟む。

「え、いやー、それは、まだ考えてないというか……兄さんに相談したかったんだけど……でも兄さんに言うと、とんでもなく恥ずかしい台詞が返ってきそうで怖いんだよね……」

「ありえる……」

 気障な台詞オンパレードの和音を知っているリィは、小さく頷く。

「プロポーズですもの、そのくらいで丁度いいのですわ。拓斗叔父様ったら、ちっとも甘い言葉を囁かないのですもの、たまには言って差し上げたらどうです?」

「うん、ペインさん、喜んでくれると思うよー?」

「そ、そんな、恥ずかしいよ……」

 いい大人が小学生に言われて顔を赤くするんじゃありません。

 そんな拓斗の肩を、ぽん、と叩く白い手があった。

「恥ずかしがってはいけないよ。男には、腹を決めて立ち向かわなければならない場面があるんだぴょん」

 それは、ウサギだった。

 円らな黒い瞳をした、巨大な白ウサギのぬいぐるみが、拓斗の肩に手を置いている。

「あー、ごしょがわらだべ!」

 シルヴィが声をあげる。

 さっきから声がしないと思ったら、シルヴィはみんなの話などそっちのけで、テーブルの上のご馳走を次から次へと口に突っ込んでいた。早く話を切り上げないと全部食べられてしまう勢いだ。

「花音……」

「五所川原だぴょん」

 巨大ウサギはピョコピョコ腕を動かした。

< 267 / 499 >

この作品をシェア

pagetop