麗しき星の花
「何のために何年も待たせたんだぴょん? 橘から独立して、大事な人を守れるだけの甲斐性をつけるまで頑張ったぴょんね? それを自信に変えて、思い切りぶつかっていけばいいんだぴょん。好きな女を満足させられる一人前の男となって帰って来いだぴょん!」

 巨大ウサギがカッコイイことを言っている。そんなシュールな光景に全員が呆気にとられる。

「大丈夫。喜屋武さんなら、待たせた理由もちゃんと解ってるぴょん。怖がることはない、胸をかりるつもりで行けばいいぴょん」

 ぽん、と更に肩を叩かれる。円らな瞳がキラリと光った……ような気がした。

 光景はシュールだが、拓斗はちょっと感動していた。

 そして言いたいことを言って満足した巨大ウサギは、
 
「それじゃあ、さらばだぴょん」

 手を振りながら、後ろ向きに歩いてダイニングを出て行った。

 途中、「あうっ!」と声がしてひっくり返りそうになったが、グッドタイミングで回り込んだ執事南原に受け止められ、クスクス笑われながら退場していった。

 戸惑いながらウサギの消えた扉を見つめていると、今度は清楚なワンピースを着た黒髪の美少女……もとい、美女がしずしずとやってきた。

 日本有数のヴァイオリニストである、和音や拓斗の妹、花音だ。

 立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花、というのが世間一般での橘花音の評価である。その中身を知っている者は苦笑してしまうが。

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