麗しき星の花
「あれから三日経ったか? あー、拓斗の披露宴終わっちゃったかなぁ。プレゼント贈ろうと思ってたのに……」

 子どもたちの手紙で拓斗の結婚を知ったのはもう三日前だ。ついでに和音、雪菜、鷹雅のぶんも一緒に贈ろうとしていたフェイレイは悔しげだ。その後ろには、翼を畳みながら無言で立ち尽くす無表情な魔族の青年、クードがいる。

「2人とも、大丈夫?」

 そこに、森の木々を掻き分けてリディルが駆けてきた。左右の耳の上でおだんごに結っているハニーブラウンの髪は少し解れ、白い肌やローブも土に汚れ、少し疲れた印象だ。巨人との戦闘は三日三晩続いたのだから、それも仕方のないことだった。

「俺は大丈夫だよ。クードは?」

「問題ない」

「リディルは?」

「大丈夫だよ」

 そう聞いても、フェイレイは自分の目で彼女の無事を確認しに行く。細い肩に手を置いて、じっと顔を眺めてから素早く全身を確認。汚れてはいるが、確かに怪我はしていないようでほっとする。

「……フェイの方が、怪我してるじゃない」

 くすりと笑って、リディルはフェイレイの頬へ手を伸ばす。木の枝で引っ掛けたのか、頬に赤い線が走っていた。

「ああ、道理でピリピリすると思った。……あ、そういえば」

フェイレイはふと、三日前に読んだ娘の手紙の内容を思い出した。



『キスはモルヒネの十倍の鎮痛効果があり、ストレスを三分の一に減らしてくれる』

 ……という話を玲音がしていました。先日、琴音が包丁で手を切ってしまったときに、指に貼った絆創膏の上から玲音がキスをしたら、確かに琴音は痛みが引いたと言いました。

 真偽のほどは定かではありませんが、もしものときは試してみてください……



< 279 / 499 >

この作品をシェア

pagetop