麗しき星の花
「空も海も大地も、美しいこの星すべてが私のもの。そして私は星のもの。私は還る。私を生んだこの星に還る。そうして星とひとつになり、生命(いのち)を巡らせる。星に生きる者は皆等しく同じ。皆この星の一部、この星の生命(いのち)」

 薄暗い空間でゆっくりと言葉を紡ぐのは、翡翠色の瞳をぼんやりとさせた、ちょっと頼りなげな少女だ。

 肩まであるふんわりしたハニーブラウンの髪は、サイドを少しだけまとめて小さなお団子にしている。そのシルエットは小動物の耳のようだ。

 彼女は手を繋いでいた。

 同じくらいの背格好の少年と。

 少女とお揃いのフード付きの白いローブを着た、燃えるような赤髪と意思の強そうな深海色の瞳をした少年は、不敵な笑みを浮かべていた。それはやんちゃな子どものものだ。

「巡る星の生命(いのち)が乞う。等しく同じ命をこの身に宿せ。求めるならば与えよう。与えるならば応えよう」

 少年の声に、空気が震えた。

 オイルランプのか細い炎が消え、辺りは余計なものが一切映らない漆黒の闇となる。その中で神木の葉擦れの音が響いた。

 閉じられた空間に風が吹く。

 濃密な緑の香りを纏った風は2人の頬を撫でた後、放射状に床の上を走った。その風を追うように黒石の上に碧色の光が浮かび上がる。

 光は生き物のように蠢き、星と円陣が幾重にも重なる多層構造の召喚陣を描き出した。中心に描かれた一番大きな星の先についた円陣が、星とともにゆるりと回りだす。

 少年と少女は碧色の光に照らされるお互いの顔を見た。少年は強気な笑みを浮かべ、少女は控えめだが嬉しそうに微笑む。

 そして、繋ぎ合わせた手を召喚陣に平行になるように掲げた。

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