麗しき星の花
「んだ! ぷれぜんと、何がいいべな。あ、兄ちゃんと姉ちゃんのじいちゃんとばあちゃんは?」

「あー、俺たちも、じいちゃんとばあちゃんのことはあんまり知らないんだ。俺たちが生まれる前に死んじゃったからな……」

 シンは少し寂しそうな笑顔で答える。

「そうなのか……」

 寂しそうな兄につられ、シルヴィも眉を八の字にする。ちなみにシルヴィは一回り小さなバランスボールの上に腹ばいになり、ゴロゴロ転がっている。

「でも、すごく元気のいい人たちだったって、聞いてるよ……」

「そうそう、ばあちゃんはにゃんにゃん先生に似てたらしいしな」

 雰囲気がしんみりしてしまわないよう、兄たちは明るい声でシルヴィに言い聞かせる。


 
 父方の祖父、ランス=グリフィノーは金髪碧眼の王子様風美青年で、身の丈もある大剣を背負う剣士であったが、フェイレイが生まれてからは傭兵を引退して、生まれ故郷の農村で畑を耕しながら暮らしていた。争い事を好まない、穏やかな性格であったとか。

 父方の祖母、アリア=グリフィノーは赤い髪に深海色の瞳をした拳闘士であったが、出世をして魔族討伐専門機関の支部長となっている。こちらは短気で喧嘩っ早く、傲岸不遜な鬼であった(フェイレイ談)。でもツンデレでかわいかったんだよ(リディル談)。

 2人の家はアストラという国境沿いの小さな村にあり、アリアが外で働いて帰ってくると、ランスがたくさんのご馳走を用意して待っていた。……いわゆる逆転夫婦である。

 2人は今、その村の丘に眠っている。


「アストラっていうのは、『星』っていう意味なんだってさ」

「兄ちゃんの剣みたいだ!」

「そうだな。……俺の名前も、そこから取られてんのかなー」

 バランスボールに揺られながら、シンは少し遠い目をする。


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