麗しき星の花
「俺もよく分かんないけど、あれは父さんと母さんがケッコンするときに約束したことなんだって」

「……約束?」

 夜の長い大きな月の星はとても冷えた。だから2人はベッドに潜り込み、冷えた手を合わせながらひそひそと話し出す。

「もっと小さいときに聞いた話だから、俺もよく覚えてないんだけど」

「……もっと前から、母さまは泣いてたの?」

「ときどき、そうみたい。怖い夢見るんだって。大切な人たちがたくさん死んじゃう夢」

 そんなことは知らなかった。母はずっと、穏やかな顔しかリィには見せていなかったのに。

 なんだか哀しくなったリィに、シンは語る。

「父さんはケッコンするときに、母さんの『罪』をはんぶんこしたんだって」

「……どういうこと?」

「よく分かんない。でもそうしなかったら母さんは生きていけなかったんだって。父さんがはんぶんこしてくれたから、しあわせになれたんだって」

「でも、泣いてるよ」

「うん。でも父さんがなぐさめてるから大丈夫なんだよ。泣いてるときにいいこいいこしてもらえたら、リィも安心だろ?」

 父の真似なのか、リィの頭を撫でてくれるシン。

 泣いている母を見て少し哀しくなっていたリィは、その優しさにほっとする。

「うん、安心」

「だろ?」

 ほわっと微笑んだリィに、シンもニカッと笑う。

 どうして母が泣いているのか、シンの話で全てを理解したわけではなかったけれど、シンがその話を聞いたときは、母がとても苦しそうだったからもう聞かないことにしたと言っていた。

 だからリィも聞かないことにした。

 なんとなくは……解る気がしたから。


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