麗しき星の花
 シンが扉のノブに手をかける。宮殿の重厚な扉は、微細な音も立てずにゆっくりと開いた。

 扉の向こうは煌びやかな家具の置かれたリビングだ。寝室はその奥。2人は足音を立てずに分厚い絨毯の上を走り、息を殺して寝室の扉を開けた。

 広い寝室の中央に置かれた、白地に金で刺繍された天蓋のついたベッド。その布団から父の赤い髪を見留めたシンは、リィに目で合図をしてから、素早くベッドに飛び上がった。

 足がベッドに着く前に、剣を振り下ろす。

(もらった!)

 そう思いながら、父の身体のど真ん中へ切っ先を押し込もうとして。

「っ!」

 ばさり、と白いシーツが目の前を覆った。

 シンの剣はシーツごと柔らかなベッドの中に突き刺ささる。足と片膝をベッドにつけたその刹那、首筋に冷たいものが走った。

「動くな。首が飛ぶぞ」

 父──フェイレイの声が背後からする。視界の端に見える剣は、シンの頚動脈に宛てがわれていた。少しでも動けば血飛沫が舞うだろう。

「な……なんで」

 起きている気配はしなかった。だからこそ踏み込んだのに。

「そんなに殺気振りまいちゃ駄目だろ。任務遂行時はきっちり気配を絶たないと……死ぬぞ」

 ふっ、と。笑う気配。

 シンはギリッと歯噛みした。

 そこへリィがトリガーを引き、援護射撃を繰り出す。

 1秒で弾倉の弾をすべて撃ち切る早撃ち。

 それを身体を後ろへ反らしてかわしたフェイレイは、宙返りしながらリィへナイフを投擲した。リィは絨毯を転がりながらそれを避ける。

 起き上がりざまにサイホルスターの後ろに入れておいた弾倉を取り出し、素早くリロード。

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