麗しき星の花
「何事ですか!」

 物音に気づいて駆けつけてきた衛兵たちに目をやり、リディルは苦笑する。

「また……陛下に叱られちゃうね」

 美しい薔薇には刺がある。

 それと同じような義姉の冷え冷えとする微笑を思い浮かべ、更に溜息をつく。

「今、他にお客様は?」

「いえ、本日はグリフィノー様だけとなっております」

「そう。じゃあ、あなたたちはここにいて。外に出てはいけませんよ」

「はっ!」

 リディルは白い夜着にストールを羽織り、割れた窓の隣にあるドアを開けてバルコニーへ出た。

 眼下で繰り広げられる親子の激しい戦闘に目を細め、両手を広げる。その細い指先から白い光が霧のように溢れ出し、風の流れに乗って庭一面をすっぽりと覆い尽くした。

 この光は護りの壁。

 これ以上庭や城が崩れないように、リディルが創った結界のようなものだった。





 窓ガラスを突き破って外に放り出されたシンは、下にある植木の中に落ちた。それがクッションとなって、大きなダメージは避けられた。すぐに立ち上がり、フェイレイが上から飛び降りてくるのを見上げる。

 両親の泊まっていた部屋は3階だ。

 放り出されたシンは別として、何の躊躇いもなく飛び降りる父は恐ろしい。くるりと一回転して着地する姿は、思わず拍手をしたくなるほど綺麗だ。

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