麗しき星の花
 結界を張ること自体は別にいい。魔力というものが存在しないこの星で、聖の存在は異質なのだということは理解している。しかしシンから見れば、聖をおじさんと言うのはどうにも違和感があった。

 確かに、おじさんと言えばおじさんなのかもしれない。聖はフェイレイのひとつ年下。拓斗と同級生。自分の親世代だ。

(でもただのイケメンにしか見えねぇ)

 結界を張る前の、神経を研ぎ澄ました彼の姿は、夕暮れのオレンジ色の光を背負っているせいなのか、とても眩しい。どう見てもただの光り輝くイケメン。おじさんなどと、口が裂けても言えない。

 そんな風に思っていると、二人のいる庭に一台の車が入ってきた。その黒いSUVを見た聖が「あぁ」と唸り声にも似た声を漏らした。

 その嫌そうに引きつった顔を見て、シンは首を傾げた。

「……師匠?」

「ああ、ごめん。ちょっと邪魔が入るかも」

 シンが首を傾げていると、運転席側からふわふわの金髪頭の男性が下りてきた。助手席側からはふわふわ茶髪の小さな少女が元気に飛び出してくる。

「あっ、聖先生、こんにちはっ!」

 少女が聖を見つけ、元気に挨拶をする。

「こんにちは、真奈ちゃん」

 それに対し、聖もにこやかに対応している。

「雛ちゃんいますかっ?」

「ああ、今日は家にいるよ」

「わぁい!」

 真奈と呼ばれた少女は顔を輝かせながら櫻井家の玄関へ向かった。それを見送った金髪の男性がこちらに近づいてくる。

「おーっす」

 軽く手を上げながら声をかけてきた男性は、聖と同年代に見える。

 だが派手だ。落ち着いた雰囲気の聖とは対照的に、金髪の頭や着崩したシャツからは、夜の街を歩き回っていそうな軽薄な印象を受ける。

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