麗しき星の花
 勝利が見えてきた。シンとリィは、その一筋の光に手を伸ばす。

 ただ、キツイ。

 魔力を吸い上げられるごとに、意識を飛ばされそうだった。

「うう……」

 繋いだ手からも力が抜けそうだ。

《耐えろ。まだヤツは倒れんぞ》

 暴風の中で、女王が囁く。

「ああ! ……が、頑張れ、リィ」

「ん……」

 握り締めるお互いの手のぬくもりを支えに、消えそうになる意識を繋ぎ留める。

 いくらフェイレイでも、精霊の女王の力から逃れるのは厳しいはず。早く降参してと、2人は願う。



「頑張ってくれるのは、嬉しいんだけどな……」

 口内に鉄錆の匂いが充満するのを感じるフェイレイは、それでも微笑んでしまう。2人で力を合わせ、不可能を可能にした子どもたちの気概が嬉しいのだ。

 それでも。

「負けてやるわけには……いかないよな……」

 伸し掛る圧力の中、視線だけを3階へ向ける。

 辺り一面に守りの壁を広げているリディルが、そのバルコニーからこちらをじっと見つめていた。

『手を貸そうか?』

 そう、静かに語りかけてくる翡翠の瞳に、フェイレイはゆっくりと首を横に振った。それに対し、リディルは仕方ないと言わんばかりに微笑む。

 僅かな間の、視線だけで交わされる会話はそれで終わった。

 リディルはただ静かに、バルコニーに佇む。

 そうしてフェイレイは、伸し掛ってくる大気圧に歯を食いしばって耐える。

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