麗しき星の花
「私も立場上、共に行くことは出来ません。頼みのヴァンくんは今、ルドルフから離れてもらうわけにはいきませんし……また迷子になるのではないかと、彼も心配していましたよ。たかが迷子で次元だか宇宙だかを超えて異世界まで行ってしまう人なんて、他にいませんからね。本当に、もう……最後までヴァンくんを連れて行かないからそんなことになるのですよ」

「すみません……」

「……ごめんなさい、それは、私のせい……」

 申し訳なさそうに謝るリディルを、フェイレイは後ろからぎゅっと抱きしめる。

「リディルのせいじゃない。あの世界は楽しかったし、星を渡ることも覚えたし、今はシンとリィを送ることもできる。俺たちはあの星で手に入れた誰にも負けない力で、きっとこの星を救える。地球は行くべき世界だったんだ」

「フェイ……」

 肩ごしに振り返るリディルの頬に、柔らかなキスを落とす。

「色んな経験が出来て、楽しかっただろ?」

「……うん」

 合わさる頬のあたたかさに、穏やかに微笑むリディル。彼女の心が落ち着くのを感じて満足そうな笑みを浮かべたフェイレイは、それに、と続けた。

「協力してくれるみたいだから、大丈夫ですよ」

 3人の視線が一斉にフェイレイたちの部屋のある3階バルコニーへ向いた。

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