麗しき星の花
《馬鹿か》

 火が揺れる。面白そうに笑う声とともに。

《……フェイレイとリディアーナは、貴方たちには一生かかっても倒せる相手ではありませんよ》

 水がたゆたう。心配そうな声とともに。

《奴らには精霊も魔も敵わぬ。その気になればこの星全土が焦土と化すだろうな》

 風が舞う。呆れたような声ともに。

《呪われし穢れた血を清められるほど強い心を持つ『勇者』、そして精霊王の力を内包する皇族の『姫』。その交わりはとても強い絆を生みました。未来永劫、彼らを超える者は現れないでしょう。あれこそ神にも等しい存在というものです》

 砂が流れ落ちる。強い畏敬を込めた声とともに。

「神……」

 呟く子どもたちに、精霊たちは微笑む。

《そなたらの父はな、すべての術式を無視して精霊王を召喚することの出来る唯一の存在だ。そんな馬鹿に勝てると思うか?》

《術式に関しては“今の”精霊王が人として存在するというのが最大の原因なのかもしれませんが……》

《大体、契約からして特殊だものな。ヤツはケダモノに違いない》

《グィーネ……“愛の力”と言ってあげなさい》

《そうです、人にとって『契り』とは生涯を共にするための神聖な儀式のようなものです》

《ただの生殖本能だろう》

《そ、そんな身も蓋もないことを子どもの前で……》

 女王たちの視線がぶつかる場所で、キラキラと光が飛び散っていくのを見上げる子どもたちは、ぽかんと口を開けた。意味が分からない。

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