麗しき星の花
「でも……でも! 俺たちはそんな柔じゃない。今までだって危険な星はいっぱいあった。それを乗り越えてここまで辿り着いたんだ、簡単にやられたりしない!」

「そうだろうね」

「じゃあ、どうして!」

「君たちは毒に対しての耐性がない」

「……毒?」

「今、目の前にあるスープに、即死性のある毒が入っていたら、どうだろうね」

「まさか」

「現にもう、毒見の者が何人か倒れている。厳重な警備を掻い潜って、ここまで来れる者がいるということだ」

 思わず銀の皿に目を落とすシンとリィ。

「つい先日も侵入者を排除した。そうだな、ヴァン」

 後ろに控える護衛官を促すと、ヴァンガードは淡々と答えた。

「はい。恐れ多くも、皇太子殿下、並びに勇者の御子を手にかけようとしておりましたので、暗部に引き渡しました。……どこの所属か、判明すれば良いのですが」

「……そういう状況なんだ」

 ルドルフはシンとリィへ視線を戻す。

「気づかなかった」

 ショックを受けた顔でシンは呟く。

「相当な手練のようだからね。そういう者たちが仕掛ける毒だ。一時の油断もならない」

「でも……だったら、ルーだって……」

 リィの呟きに、ルドルフは緩やかに首を振る。

「私も、弟妹たちも、毒に耐性をつけるために生まれたときから少しずつ慣らされてる。致死量の毒を盛られたとしても、私は死なない」

「な……」

「驚くかい? でも……悲劇を繰り返さないためには仕方ないんだ。皇帝に毒を盛られてクーデターを起こされた過去があるのだから」

 その話に、シンとリィはビクリと反応した。それを見て、ルドルフは頷く。

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