過保護な彼にひとり占めされています。




「あ〜……食べたー!」



何気なく見たスマートフォンの画面に表示された時刻が、夜の22時を過ぎた頃。

居酒屋を出て帰路へとついた私たち3人は、アルコールの匂いを充満させ、ほろ酔い気分で電車に揺られていた。



「だろうな。おごるとは言ったけどあそこまで食べるとは思わなかった」

「「相葉さんゴチでーす!」」



ドア側に立ち声を揃えて手を合わせた私と名波さんに、目の前の黒い鞄を持った相葉は「ったく」と呆れたようにボヤく。



『池袋ー、池袋です……右側のドアが開きます』



するとちょうど池袋駅に停まった電車に、名波さんは黒く長い髪を揺らし『池袋』と書かれたドアの上の文字を見た。



「あ、私ここだから。じゃあね、お先〜」

「お疲れ様でーす」



ドアが開くとともに細く長い脚で外へと出た名波さんを、相葉とふたり見送ると、入れ替わるようにホームで待っていた人たちが一気に乗り込んできた。

わっ、すごい人!な、なんで!?



『ただ今、人身事故の影響で大変混雑しております。ご迷惑をおかけしておりますが……』



戸惑っていると聞こえてきたアナウンスから、この混雑は人身事故の影響で電車を待っていた人たちなのだと知る。

そのうちにもずんずんと乗り込んでくるサラリーマンや若者たちに、入り口付近にいた私と相葉は車内の奥へと押し込まれて行った。



「っと……すごい人だな。大丈夫か?」

「うん、けど私千川で降りたいのに……大丈夫かな」



不安げにつぶやくうちにあっという間に人でいっぱいになった車両は、ドアを閉じまた走り出す。

ちらっと見れば、壁際に立つ私に相葉は私の頭上の壁に手をつき、どこか守ってくれているかのような形で目の前に立っていることに気付いた。


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