過保護な彼にひとり占めされています。
「村本。キスして、いい?」
耳もとで囁く低い声が、一層強く胸をドキッと鳴らす。
……ずるい。二度もキスしておいて、今更改めてそう聞くなんて。
声が全身にめぐって、恥ずかしくて、どうしようもない。
「っ〜……だ、ダメ!」
「へぶっ」
その照れを誤魔化すように、私は空いていた左手で相葉の頬を押しのけた。途端にそれまでのふたりきりの空気は、いつも通りのものになる。
「お前、この空気で断るか普通……」
「だ、だって!聞かれても!恥ずかしいもん!」
苦笑いを見せる相葉に、ますます自分の頬が赤く染まるのを感じた。
離れたところから聞こえる、皆のにぎやかな声。それを聞きながら、右手はまだ握られたまま。
「……お前さ、自分が多少痛い思いしても我慢して流そうとするのやめろよ」
それは、先ほどの『大事にならないように』と笑って誤魔化そうとした私の態度への言葉。
「この前の山野フーズの時もそう。話が大きくなるくらいなら、って自分で処理しようとする」
「……だって、大事になって周りを困らせるの、嫌なんだもん」
口を尖らせ、ぼそっとつぶやくと、相葉は呆れたような顔をした。
「それで手遅れになったらどうするんだよ。心配するほうの身にもなれ」
心配、してくれている。
だからさっきも、離れた位置からもすぐ駆けつけてくれた。見ていないかのようなふうで、見てくれていた。
そんな些細なことが、嬉しい。