過保護な彼にひとり占めされています。
「ちょっと言い寄られて期待しちゃった?からかわれてるんだよ。言い寄れば落ちる、安い女だと思われてるの。心の中では軽蔑されてるよ」
冷静な口調と笑顔が、その言葉が悪意なのか真実なのか、分からなくさせる。
「そんなこと、ないです……」
「そう思うなら、弘臣に好きって言ってみたら?……笑われるのを覚悟したうえで、ね」
成宮さんはそうふっと笑みを浮かべると、その場を去った。コツ、コツ……と遠くなるヒールの音に、私は固まったまま動けずにいる。
からかわれてる?
告白に応えもせずキスは許す、簡単な女だと思われてる?
……ううん、相葉は『全部が好き』って言ってくれた。
最初の告白から、何度も何度も想いを伝えてくれた。
その相葉の言葉を信じてる。信じたい。
……だけど彼女のひと言は、心の中の小さな不安をあおるのに充分すぎる。
『言い寄れば落ちる、安い女だと思われてるの』
本気にしていた。
本気に、聞こえていた。
だけど、怖い。
その心が本当はどう思っているのか。それは『好き』、そう言葉にすれば全て判明すること。
だけど、知りたくて知りたくなくて、どうしたらいいのかがわからない。
心に決めた決意は、揺らいでしまう。