過保護な彼にひとり占めされています。
3日前のクリスマスに告げられた告白の答えは、『ごめんね』のひと言。
それは失恋を意味しており、つまり俺はフラれたわけだけれど。
「村本ー、これコピー頼む。終わったら午後から明日のイベントの最終チェックな」
「あっ、はい」
階段を下りたところで聞こえてくる、『村本』の名前とそれに答える高い声。つい目を向けると、階段の下ではちょうど先輩から書類の束を受け取る村本がいた。
「コピー機ちょっと調子悪いけど、叩けば直るから」
「叩けばって……いいんですか、それ」
あはは、と聞こえる小さな笑い声とともに、村本は笑って階段を上ってくる。
そして俺の姿など見えないかのように、目を向けることすらもせずに通り過ぎて行った。
……覚悟していたつもりではある。けどここまで露骨に避けられると、なかなか。
さすがの俺だって、傷つく。
あの日、クリスマスの夜。仕事の後に会った村本はなんだかおかしくて、元気がないというかよそよそしいというか、とにかくいつもと違う様子なのは明らかだった。
そんな彼女から告げられた『ごめん』の言葉は俺の自惚れかもしれないけれど、とても本心には見えず、強く問い詰めた俺にその顔は泣きそうな顔で逃げ出した。
いきなり出された答えも、あの態度も、どうも腑に落ちないっていうか。
階段を降り終え、髪をかいてまたひとつため息をこぼす。