過保護な彼にひとり占めされています。




翠は、大学の頃からの仲で、よく一緒に遊んだりしていた友人のひとり。

サバサバとしていて明るくて、少しきついところもあるけれど、気を遣わず話せることもあってよく皆でいた。



けど、翠が村本になにかを?

言ってないとしても、もしかしたらなにか聞いているかもしれない。

とりあえず、聞いてみるにこしたことはないだろう。






考えるうちに今日の仕事を終え、迎えた夜。俺の姿は新宿のとある居酒屋にあった。創作和食料理が有名で、魚が美味いと評判の店だ。

沢山の客でにぎわうその店の奥、四人掛けのテーブル席には、向き合い座る俺と翠の姿。



「うん、魚おいしい」

「だな。刺身もいいけど煮魚もうまい」



箸で鯛の刺身をつまみ、ぱく、と食べる翠にうんうんと頷いた。



……村本だったら、もっとオーバーに喜ぶんだろうな。

なんて、よくないと分かっていても、こうして他の人とふたりでいても、村本と比べてしまう。

あのしぐさや反応、表情を思い出して。



村本だったら、『んー!』と声を出して、嬉しそうに笑うのだろう。

時折服にこぼしたりしながら、幸せそうに頬を膨らませるあの表情ひとつが、こちらの胸の奥まで埋め尽くしてしまう。




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