過保護な彼にひとり占めされています。
「一花、おはよー」
「あ、名波さん。おはようございます」
ひとりそう考え込んでいると、背後から声をかけ私の背中を叩いたのは、名波さん。
今日はおろしている黒く長い髪をバサッとなびかせ、黒いトップスと細身のパンツ、差し色に白いジャケットとその格好は動きやすくかっこいい。
“デキる女”といったスタイルで、私の隣のデスクに黒い大き目のハンドバッグを置いた。
同じ動きやすさ重視の格好でも、紺と白の切り替えワンピースに黒いタイツを合わせただけの、ちんちくりんな私とは全く違う。
「昨日はあのあと相葉とどうだった?」
ところが、名波さんから出た突然のひと言に心臓が口から出そうな勢いで跳ねた。
「えっ……え!!?」
「いや、昨日人身事故あったみたいだから、あそこから電車一気に混んだでしょ?大丈夫だったかなーって」
思わず過剰な反応をする私に、マスカラのしっかり塗られたその大きな目は、不思議そうに首を傾げる。
って……『どう』って、そういうことか。
あぁもう、常に考えがそっちに向いていて、自ら墓穴掘りそうな勢いだよ……!
「ちゃんと帰れたような、ちゃんとではないような……」
「へ?どうかしたの?」
いや、私の精神面的な話で……。
男性の多いこの職場で、頼れる姉御である名波さんくらい親しい人になら話してしまいたいとも思う。
けれど、『相葉って私のこと好きらしいですよ』……なんて、言えない。
想像しただけで照れてしまうその響きに、私はまた髪をぐしゃぐしゃとかきながら頭を抱えた。